Q.

ザンスク状態変化を答えよ。

A.

クーデター前(青春時代)

年下幼妻(うおい)をべったべたに甘やかす、大人ぶる年上の旦那(でも調度反抗期で難しい時期なのでどいうしてもボロが出る)

指輪戦時(なんだかいきなり年齢逆転)

苦節8年を耐え忍んだ姐さん女房に甘えてだだこねる、人生初の挫折を知って癇癪起こしてる年下亭主

10年後

万年新婚イチャイチャバカップルの熟年夫婦

 

これだ!!(じゃねぇよ!!)

 

以上をご理解の上、下記をご覧下さい。

やったらめったら甘いです。

胸焼け起こしても責任負いません。

 

 

 

 

 

 

 

糞爺に引き留められ、予定を押して帰ってきたのは確かだが、向こうを出発する前に連絡したというのに迎えに出てこないとはどういった了見だ。貴様それでも俺の部下か随分と偉くなったもんだなぁ、ああ?と、広い廊下が狭く見えるほどの怒気を逆昇らせ荒々しく歩く。

執務室や自室へ行くよりまず先に、鮫の私室へ向かっている己にも釈然としない。

出会い頭にかっ消してやろうと握った拳に炎を宿し、蹴破る勢いでドアを開け放ったザンザスは気勢を削がれた。

「ボスじゃん。お帰り〜」

ソファー中央で我が物顔に胡座をかき、その足の間にクッションを抱える金髪のお子様。

先日就任させたばかりの小さな幹部が、正面に置かれたテレビから顔をこっちへ向けて、暢気に出迎えた。

ここは確かに己がスクアーロに与えた部屋の筈だ。

一旦ドアを閉め、周囲を確認しもう一度ドアをあけて室内を見回す。

位置も内装も間違ってはいない。

なんだこれはと、御曹子はおもいっきり眉を寄せた。

 

 

暗くなるまで待って

 

 

「スクアーロー!ボス戻ってきたよ!それから王子のココアまだー!?」

軽いパニックを起こしている若輩のボスを放ぽって、ベルフェゴールは私室内にある簡易キッチンに立つ銀色の少年剣士に向かって声を張り上げた。

激昂した主の気配が近付いてくるのを当然察していたスクアーロは、部屋に足を踏み入れる前段階で唐突に消え失せた怒気に、はてと首を傾げたが知らせてくれた年下の同僚に応えを返し、慌てず騒がず作業を続ける。

「わかってるぞぉ!それからココアはもうちょいだから大人しく待っとけぇ!!」

「早くねー!!」

キッチンにいるらしい鮫と子供が自然な流れで会話を続けていくのについて行けず、ザンザスが立ちつくしたままでいると、スクアーロに言われたとおり大人しく画面に顔を戻す途中の王子様が目をとめた。

「所でなんでボスが此処にいんの?」

きょとんと心底不思議そうに見上げられ、それはこっちの科白だと怒鳴り返すのがどうにか堪え、息を吐いて怒気を逃した主に、キッチンから出てきた剣士の少年が気安く声をかけた。

「よお、御曹子。遅いお帰りだったなぁ」

両手にマグカップを持ったまま、立ってないで座れよと、空いたままの一人がけのソファを指す。クッションを放して小さな腕を頂戴頂戴と伸ばしている王子様に片方手渡し、自分用に入れたそれを手にしたまま、子供の隣にさも当然と腰掛ける。

どちらも大して体重はないが、それでも幼児と少年では年齢からして体格に差は当然ある。鮫の方のマットがより沈み、それに従いちっちゃな王子様はこてりと薄っぺらいスクアーロの肩に、幼児らしく身体に不釣り合いに大きい頭を凭せ掛けた。

それを払いのけもせず、熱いから気いつけろよと注意を促し、銀色の部下は傾けるカップの中に毛先が混入しないよう、髪を掻き上げてやっている。

「その前にちょっと温くするくらいの気きかせろよ」

「熱いのを冷ましながら呑むのが良いんだろぉが」

「それはあるかもしんない」

「だろぉ?」

頷いて、こくりを自分のために作られたココアを飲み込んで、好みの仕上がりだったのか満足気に口を弛める切裂き王子に、こちらもカップを傾けて上手くできたじゃねぇかと自画自賛の少年剣士。

 

なんだこの状況。

 

「おい、スクアーロ」

「あ゙あ?」

いい加減に黙ってられなくなって御曹子が声をかけると、ひょいと顔を上げたスクアーロはなんでまだつったってんだ?とでも言いたげに訝しげな顔をして、ああ、と納得したように頷いた。

「わりいなぁ。あんたに出してなかったわ」

ひょいと身軽く立ち上がり、またキッチンへと戻っていく銀色をどうすることも出来ずザンザスは見送ってしまった。

「なぁ、ザンザス。あんたなんか喰ってきたかー?」

とキッチンから届く声に、まだだと返せば、じゃあなんか軽いもの持ってくぜぇと答えがかえる。

それに見えてないだろうが顎を引いて、ようやくソファに座ったザンザスは、その横に置かれた長椅子でココアを口にしている金の子供を赤い眼で睨め付けた。

しかしその視線をものともせず、子供は愉しげに番組を見るばかり。

が、暖かく甘い飲み物が腹にたまって意識も身体が弛緩してきたのだろう。スクアーロが戻ってくる前に、こくりこくりを船をこぎ始めてしまった。もう夜も大分遅いのだから、無理もない。

ガキなんざどこでも唐突に寝るものだ。

戻ってきたスクアーロはそれを見ると、手早くザンザスの前のローテーブルに軽食とココア(!)を並べると、王子の危なっかしい手元からカップを取り上げた。

「おいこらベル。眠いならとっととベット行きやがれ」

「王子、これ見終わるまで寝ない」

こしこしと目元を擦りながら口を尖らせ、カップ返せと駄々をこねる幼児に仕方ねぇなあと溜息を吐いて、子鮫はひょいとその身体を抱え上げ、膝の上におろす。

腹に手を回して、銀色のティアラを邪魔そうにしながら金色頭に顎をのせて、抱き込んだベルフェゴールの手にカップを戻して支えてやって、

「まったく。眠くなったら早いところもどれっつーの」

と笑っている。

満足げに背を肉の薄い骨張った胸板に寄せてうししと笑う王子様。

 

ガキがガキの面倒をみてやがる。

 

なんだこれはと、なんだこの状況はとザンザスはもう一度胸中呟いた。

しかしひきはがすのもどうなんだ?

呆然としながら機械的に出されたものを口にして、流れるテレビをぼんやりと惰性で眺ていると、ひょいと年下の銀髪が子供を抱えて立ち上がった

なんだと見上げれば、屈託無く笑って子供を示す。

「寝ちまったから、ベット連れてくわ」

対して時間も経ってねーのに、だから我慢すんなっつーのになーと声をかけられて、なんと答えろと?

おい、スクアーロ。

お前はどこの母親だ?

それでいったら、俺は旦那なのか?

おい。

しかし内心の質疑に答えは当然あるわけなく、スクアーロはベルフェゴールを抱いて寝室へいったん消えてしまった。

そこでなんでテメェの寝床につれてくんだよ。ふうつベルフェゴールの部屋じゃねぇか?ああ?

なんてぐるぐるしても口に出せない。

すぐに戻ってきたスクアーロは、ぐるぐると肩を回してやれやれと今まで二人でいたソファーに座る。

そこで漸くザンザスは声を発することに成功した。

「あれはなんだ」

もう何十分喋ってなかった?

擦れた唸るような御曹子の恫喝に、跳ねた銀髪を揺らして変な事をきくなぁとスクアーロは瞬いた。

「なにって、ベルだろ?」

ベル?ベルだと?いつの間にそんなに仲良く成りやがった。俺がいなかったのは3日だけだぞ。その間なにしてやがったカス鮫が。とまるで女房の浮気を責めるような科白は流石に口にするのが憚られ喉奥に押し込む。

「そうじゃねぇ」

代わりに出たのは呆れるほど要領を得ない陳腐さだった。

「そうじゃねぇって、なんだぁ?あんたが入隊を許可したんだろ?」

まぁそうだと頷けば、それに何か思い出したのか、途端にスクアーロが顔を顰めた。

仏頂面でソファを離れた剣士は主の目の前に立ち、なんだとザンザスが目を眇めていれば、床に膝をついてザンザスの腿に手を置き、胸元にまで伸び上がって肉薄してくる。

軽い痩身は大して苦でもないが、これが仮にも上司に対する姿なのだか。しかも触れる硬い金属と、生身の手。どちらも温度は低かったが、違いが明らかで苦いものが込み上げる。

「おい」

なんのつもりだと続ける前に、剣呑な銀の虹彩で下から眼付けられてザンザスは赤い瞳に戸惑いを浮かべる。

「ゔお゙ぉい、御曹子。なんだは俺の科白だぁ」

「あ?」

「俺はベルを、新しい幹部を選んだなんて聞いてねぇぞぉ!」

そうネクタイを弛めシャツを寛げた胸元で愚痴る拗ねた鮫を、どうしてくれよう。

なんだそれは。

確かに計画に係わることだが、一々断りを入れるようなことか?

テメェは俺の剣で、命令に従うだけだとか言ってなかったか?

しかし下手な事を言おうものなら、その騒音指定が確実に入る濁声が耳元でがなり立てることは必死だ。

嘆息して、有能な頭の中で軽く文章をまとめるとザンザスは二つ年少の部下に告げてやった。

「テメェが聞いてなかっただけだカス。俺は確かにベットの中でだったが伝えたぞ。ガキだが仕えそうな奴が入るから、計画に組み込むと」

フンと鼻先で、非はテメェにあると嘲笑してやれば言われたことをかみ砕いているのか暫く沈黙し、気まずそう下から銀色の鮫が伺ってくる。

「ゔ、お゙ぉい…もしかして、一週間前のあの時かぁ?」

「は!その時以外に言った覚えはねぇな」

珍しくもない激しい情事となったその夜に、体勢は違うが、御曹子がなにか言っていたのを今と同じように見上げていた記憶が少年には確かにある。

そんな時にそんな重要な話しをしなくてもと思うが、文句を言ったところで始まらない。頭を抱えたスクアーロは、ああ、これを墓穴というのかと深くうなだれ、ぺたりと自分と違って厚い筋肉にしっかりと覆われたザンザスの胸に額を押しつけた。

「なに甘えてやがるどカス」

「うっせぇぞぉ。反省してんだぁ、御曹子。邪魔するなぁ」

あの状況で覚えていられた方が自分のプライドに係わるが、傲慢が過ぎて鼻につくような奴なので、殊勝になるのは良いことだと、黙って好きなようにさせてやる。

銀色の毛先が口元に触るのがくすぐったく、押さえるのに手をおいて、なんだかんだでこいつを力一杯甘やかしている己はどうしようもないなとザンザスは自嘲を浮かべた。

しかし自分が甘やかされているなんて微塵も考えていないんだろうスクアーロのほうが、もっとどうしようもない。

本当に、この鮫は悪辣なほど鈍感で傲慢極まりない。

愛想を振りまいて気疲れして帰宅した主が、唯一心を許している相手に放っておかれる状況にどういう心境になるかなんて、考え及びもしないのだろう。しかも、その理由は金色の子供の世話を焼くのに忙しくて、だ。

この鮫がまだ本当に幼く、ザンザスの駒、剣であれれば満足で、それ以外の事に気を回す必要はないと思っているのをザンザスは気づいていたし分かっている。

己の言い分を押し付けるだけ押し付けて、ザンザスのことを慮かれない。

主を戴いたといっても、未だ無意識のうちでは世界の中心に自分をおいた、自分の考えだけが正しいと信じている、愚かで傲慢な子供。

テュールとの決闘にしても、左手を切り捨てたことにしてもそうだ。

約束だ誓いだ、俺の全部はお前のものだと、勝手に重荷をザンザスに背負わせて、追いつめて、逃れられないようにしてくる。

年上で繊細な機微をもつ主は、自分の心情を思いもしない鮫の傲慢に腹立ち、むかついてしようがなかった。

だが、あまりにも純真にザンザスがすべてだと言い切って慕ってくる年下の少年は、初めての己だけの物であり、多分言っても理解できない馬鹿だから仕方ない、まあいいかと甘やかしてしまっている。

しかし傲慢なだけでなく、その鈍感ぶりたるや凄まじい。

配慮が皆無な所にいらっときて、わかって欲しいのに知ろうともしない鮫に堪忍袋の緒がぷつんときて、暴力やら性行為に訴えてしまうのもしばしばであるのだが、これくらい許されなければ、ザンザスもやっていられない。

スクアーロは、どういった感情を伴ってザンザスが行動しているかなんて、まったくもって無視をする。それをそのまま甘やかしている己にも原因はあるが、基本的に鮫自身の傲慢の所為が主だ。

なにか対策を練るべきかと思索に耽ろうとした所で、張本人の行動に邪魔されて、御曹子は溜息を吐いた。

「今度はなんだ、カス」

顔をはなし、今度はぺたぺたとザンザスの身体を触り始めたスクアーロに、もう反省の色は見られない。

分かってはいたが、心底から馬鹿だ。

学習能力がない。

そんな判定を下されているとも知らず、スクアーロは憧憬を顕わにしてザンザスを見上げ、己の身体を見下ろす。

「やっぱあんたでかいよなぁ。おれももうちょいウェイトがよぉ」

十代前半の二つの年の差というのは、大きい。

精神面でいえば、それこそ幾つになろうが個人の問題なので判然としないが、欧州人の肉体面で言えばそれは顕著だ。

16と14。成長期も半ばを過ぎ、ほぼ完成に近い体躯のザンザスと成長期に入ったか入らないかのスクアーロ。

ましてやはスクアーロは骨格からして違う。縦には伸びるかも知れないが、この感じは横には無理だろう。

それは本人も自覚しているのか、身の軽さと身体の柔らかさを生かしたスピードとアクロバティックな戦闘スタイルを選んでいる。選択は正しく、将来にも繋がるだろう事は確実だ。

だが、やはり斬撃に重さを求めるには、もう少し横に欲しいというのは当たり前だろう。

分かっているが諦めきれないと吐息をつく、アクは強いが、そんじょそこらではお目にかかれないような美人顔を見下していたザンザスは、けぶる銀色の睫毛が瞬いたのに鮫の顎を掬い上げて上向かせると、色見の薄い口唇に己の肉厚のそれを重ねた。

唐突な所作に戸惑ったのか数瞬反応は返らなかったが、スクアーロはすぐに心得たように躊躇いなく応えてくる。

眼を開けたままキスを深くしていき、近すぎてぼやける面貌とは裏腹にはっきりと見えるきめ細かな真白い肌に、銀色の眼球を観察する。

まちがいなく、この独特な美貌の価値を引き上げている銀色の色彩。

どこもかしかも色素が欠乏したようなこの美しい鮫は、そんなところまで母親にそっくりだと界隈では評判らしい。

出会ってすぐにその身上を調べ上げたザンザスは、鮫の経歴も本名も知っている。

情報は拍子抜けするほど簡単に手に入った。

スラム出としては意外なほどスクアーロの出自がはっきりしていたからだ。

 

母親は娼婦で、父親は中小マフィアの幹部という、ありふれた、ありきたりな産まれ。

女は場末にいるには相応しいとはいえない娼婦で、望めばもっといい家も客も手にはいったし、いい生活も出来たはずである。

昔は下っ端だった女の客。相場の高くない下級の娼婦しか買えなかったマフィオーソ達は、地位を上げてから口々にもっといい暮らしをさせてやる、愛人にならないかと口説いたと話していた。

死んで5年近く経過するというのに、ボンゴレのシマ内で仕事をしていた女を今でも覚えている奴らは多い。そっくりのスクアーロを連れて歩けば、何人かは懐かしそうな顔をする。

男達の誘いを、今の暮らしが一番性にあっているとつっぱね続け、いつまでもスラムに留まった変わり者。子供が出来てもそれは代わらず、面倒を見ようと言ってきた父親にあたる男すらもはねのけ、一人で産み育てていたという女。

やっかまれもしたが、客に多くのマフィオーソを抱えた女には娼婦仲間もへたな客も報復が恐ろしく、手が出せずに終わったのだということが話や調査書から見て取れた。

俺の母親とは大違いだなと、似たような境遇でありながらまったく違うスクアーロに不可解な感情が浮かぶが、それはなにか静かな諦念で、珍しくザンザスを荒上げるものではなかった。どんな生活だったと尋ねれば、そんな境遇の本人は幼少期を屈託なく笑って言ってのける。

「煩くって汚いばっかな街だったけどよ。俺も、性別が違うだけでそっくりだったあの女も、それなりにおもしろ可笑しく暮らしてたぜ?」

スクアーロが10になる頃に死んだ女に代わり、父親にあたる男が面倒をみると言ったのを、やはり同じようにはねのけた銀色の、女にだけ似た子供。

遺伝子上では父親の男が、せめて学校くらいはと懇願するので、スクアーロはマフィオーソの子息達が通う寄宿舎の世話だけはさせてやった。

卒業までの学費と、成人まで普通に生活する分には充分な金を貰って以来、合うことも拒否したその父親は、3年後に死んだ。

当時既に剣士として名のある剣豪を倒して回っていたスクアーロは、その情報をどこからともなく仕入れたが感慨もなく、死んだのかと頷いただけで済ませた。

そんなどうでもいいことよりも、強くなりたかったから。

しかし剣豪を求めて世界中を飛び回るには金がかかる。

男の寄越していた生活費は底をついていた。

旅費を得る為に、勘違いした輩に依頼されるよう暗殺を請け負っても、賞金稼ぎをしてもよかったが、まだ潔癖な子供心を残していた少年は、強くなる以外の事に剣を使うのは剣士の誇りを汚すようで気に喰わなかった。

結果、スクアーロは大金を手っ取り早く稼ぐのに、母親がそうだったように躊躇いもなく体を売った。

ナルシストではなく剣士であるスクアーロは自分の容姿に頓着せずに傷をつけたが、その自分の価値もよく知っていたので、相応しい額で己を売った。

母親を懐かしんで買う男や、知らずともその容姿に眼の色を変えた男達はたまに吹っかけても、スクアーロの言ったままに大枚を支払う。

馬鹿ばっかりだなと侮蔑しながら、母親と同じく贅沢を求める性分ではない少年は、必要な分を必要な時だけ稼ぎ、あとはただ強くなる事だけを求めて獲物を探しては喰らいついていった。

そんな風に過ごしている頃に、スクアーロはザンザスに出会った。

心酔し、主と定めた御曹司と寝るつもりはからっきしなかった剣士だったが、一度そういう関係になってからは放埓に振舞った。

その後、覚えているかぎりの寝た男の名を言わされ、その相手が数日後には皆死体となって路上に転がった事には心底驚愕したのだが。

「てめぇが俺のもんだって言うなら、二度と他のやつと寝るな」

そう言われてしまえば釈然としないながらも納得し、いいつけを守ってスクアーロは売りもやめた。第一、任務で入る報酬もあれば、遠征に出るような時間もなかったので、する必要がない。

そんな風に過去を羞じるでもなく、飄々と言ってのけ笑う本人や調査書からそれらの情報を得たザンザスは、なんにしろ、馬鹿に違いはないと感想を抱く。

スクアーロもその母親も、とことん馬鹿で愚かで傲慢だ。

そのくせ、見当違いに気を遣う。

柔らかに舌を、口腔を舐る主になにを感じたのか、ザンザスが離れたのを受けて息を整え、顎の輪郭を伝っていく唾液をぐいと拭った銀色の鮫は、今度は自分から口付けてきた。

「大変だったなぁ、御曹子」

理由は知らずとも、ギスギスした空気から親子間の不仲を当然読み取った少年は、粗暴さのない落ち着いたキスにザンザスが疲れているのだと漸く思い至る。

だから労りをその口元に柔らかく浮かべ、軽いキスを顔中に繰り返すのだ。

「お疲れさん」

そう笑う銀色に、ザンザスはカス鮫がと毒づいて、痩躯を引きずり上げて思うさま貪る。

渇いた身体を潤すように、ひんやりとした冷たいスクアーロの姿態が添うのが、嫌になるほど心地よかった。

 

 

 

 

 

 

その後

「どカス、テメーしばらく任務無しだ」

「なんでだぁ!?」

「体温が低い。普段平熱高いくせになんだこれは。まだ身体機能狂ってやがるな」

「うおぉい!!さんざん無茶したあとで言う科白かぁ御曹子!!だいたい熱は下がってー・・・!!」

「ほぉ?熱まであったてーのかこのどカス鮫。」

「へぶし!」

「暫く起き上がれなくさせてやる。動けるんだったら、別に構わねぇがなあ?」

「こっの…どエス!!」

「どエムが言ってんじゃねぇよ」

「うるさい…王子、眼冷めちゃったじゃん」

「ベル!助けろ!!」

「……ボス。それ、王子の」

「明日貸してやる。大人しく部屋へ戻ってろ」

「…王子任務なんだけど」

「他に回してやる」

「じゃ、イーよ。スクアーロー、明日王子とお昼寝だかんね?」

「ちょ!まてこら!!うおぉい!ベル!!」

 

翌日のスクアーロさんは、陸地に打ち上げられた鮫のようだったそうです。

 

「夫婦の営みは大事らしいから、いいじゃん。王子両親の仲が悪いと空気悪くなるからヤだ」

「……つっこみたいのは全部だけどよぉ。とりあえず、どっからの知識だぁ」

「昼の連ドラ」

「もっともガキらしいの見ろ」

「じゃ、生命の神秘。鮫の生態。調度今日やるってさ。誕生から終焉まで」

「………」

「交尾とか出産シーンもあるんじゃね?」

「連ドラでお願いします(泣)」

「うししししし」

 

 

 

 

 

後半だれたのが丸わかりですな!

もういっそ父の不憫終わりで斬ってやろうかとも思ったんですが、それは前回やったので。

タイトルはどっちかってーと、子供が眠るまで待って、の方が正しいですね。

 

ちなみに最近変わってきたスクアーロ像

前は最中とか見られるのがいやな常識人だったんですが、今は前後最中オールオッケーなオープンキャラに。羞恥心があんまり無い。

多分ボスより年下ってのが効いてる。

14でスラム育ち。おまけに何気なくボスが甘やかすので。